5/20/2015

アルバートキングの名曲「Blues At Sunrise」について その1「歌詞」

アルバートキングについてのリサーチを続けています。 古いアイポッドにすべてのアルバートキング録音を詰め込んでそれが常にカーステレオにつないであります。 僕の子どもたちは車に乗るたびにアルバートキングを聴かされていますが、今のところ苦情はありません。 

さて今回のトピックは以前話をした「Blues At Sunrise」という曲についてです。 この曲はアルバートキングの定番中の定番と言ってもいいような曲でカバーもたくさんのミュージシャンがしています。 言ってみればなんということはないスローブルースなんですが、よく歌を聴くと全く飾りのないストレースなブルースで聴くたびに感動できる素晴らしい曲なのです。 アルバートキングもこの曲では彼の得意なブレイクなどもほとんどしません。他の曲でやっているようなファンキーなバージョンを焼直したりもしていません。 いつもただ歌ってひたすらブルースギターを弾くだけなのです。 この名曲を聴きこめば聞き込むほどアルバートキングのブルースの素晴らしさがわかってきます。 おそらくアルバート本人もかなり気に入っていた曲なのでしょう。

(若きBBキングがウエストメンフィスのサニーボーイウィリアムソンを訪れて初めてラジオ演奏して認められ後に録音した同名の「Blues At Sunrise」はアイボリージョーハンターの曲で別の曲です。)

 まずこの曲が初めて録音されたのは1960年です。 セントルイスにてボビンレーベルの2度目のセッションのようです。 2テイク録音されました。












ボビンの録音を集めたこのCDで両テイク聴くことができます。

まずこの曲の歌詞の話から始めます。

BLue at Sunrise / Albert King

1, When the sunrise in the east, lover
It set deeply in the west
Yeah, the sunrise in the east
It set deeply in the west

I've been lookin' for my baby
And I haven't found her, yet


2, I'm gonna call up China
And see if my baby's over there
yeah, I'm gonna call up China
And see if my lover's over there

Well, I've searched the whole world over
I can't find my woman, nowhere


Piano solo


3 Yes, Someday baby!
You're gonna want me, like I want you
Yes, someday baby,
you're gonna want me, like I want you

Well, when you call me on the phone, woman
I'll say I have nothin' for you to do

この曲のアイデアはおそらくロバートジョンソンの「I Believe I'll Dust My Broom」、とBBキングの「Worry Worry」からとられたのだと思います。 

まず1番目の歌詞はアルバートのオリジナルでしょう。「東から日が昇り西に沈む。彼女を何日も探しているんだけど、どこにも見つからない。 というふうな意味ですね。」

2番の歌詞はロバートジョンソンの「I Believe I'll Dust My Broom」の最後に出てくるものとほぼ同じです。 それからもっとさかのぼればココモアーノルドの「Sissy Man Blues」という曲でも同じ"China"の歌詞が出てきます。 この場合の「CHINA」は中華人民共和国という意味より、「地球の裏側の果て」という意味合いが強く現代、21世紀感覚の世界の工場CHINAからはかけ離れた意味があると思います。日本人からみたらCHINAは「果て」ではないのでこの感覚はだいぶ違いますね。 ちなみにロバートジョンソンは同じ歌の中で「CHINAで彼女が見つからなければエチオピアで探そうか」と歌っていますがこの場合のエチオピアもアフリカ全土を指し、「想像を絶するくらい遠い国」という意味だと思います。

間奏の部分がギターではなくピアノソロがしかも最後の4小節だけつけられているのもレコードのシングル盤の時間制限が理由でしょう。別テイクではソロはありませんがその代りピアノイントロがつけられています。

3番の「Someday Baby!」という歌詞とメロディーはBBキングの1958年のヒット「Worry Worry」からとられたのだと思います。アルバートキングの1959年録音の「Ooh Eh Baby」 それに1961年のヒット曲「Don't Throw Your Love On Me So Strong」でも同じように「Someday Baby!」という歌詞が使われています。 よっぽど気に入っていたのでしょう。

この3番の後ろでホーンセクションがデュークエリントンの「Things Ain't What They Used to Be」を演奏しています。 アルバートのアイデアではなくプロデューサーかアレンジャーのアイデアでしょう。 同じセッションで録音された「Let's Have a Natural Ball」ではHorace Silverの「Cookin' At the Continental」完全にコピーされています。 現代の感覚では少し考え難いパクリですが、当時のセントルイスでのローカルレコードレーベルはまさか50年後にもこうして聴かれることなど想像もしなかったのでしょう。それはともかく曲の完成度は高く素晴らしいのです。


後に録音されたライブ盤では

She won't write me no letter
She won't even call me on the telephone
You know I haven't had no real good lovin'
Since that gal-a mine been gone

という歌詞が3番として加えられており、その後

Oh, someday baby, you're gonna want me, like I want you
But when you call me long distance, darlin'
I'll say I have nothing for you to do

という詩が4番として歌われます。 
がこれもおそらくシングル盤の時間制限が理由でこのスタジオ盤ではカットせざるをえなかったのでしょう。

ライブ録音にについてまだまだたくさん書くことがありますので、まだまだリサーチは続きます。